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Their Metallic Hearts - feat. 巡音ルカ

musique/composition/mixtures

written 2021/4/17


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 前作「さくらんぼさく」でサビに該当する箇所をややメタル調で作ったらそれが自分で気に入って、今度は全編ヘヴィメタルにしようと考えた。
 Apple Musicでちょっとメロディコア寄りのメタルバンド、「Rise to Fall」「dEMOTIONAL」「アマランス」「ディレイン」辺りをずっと聴き込んだ。
 今回はGadgetでなくiMacのLogic Proで制作しようと決めていたのだが、やはりエレキギターのいい音源がない。従来から貧乏性で高いソフト音源やプラグインはあまり買わずLogic Proのデフォルトで入っている附属のもので済ませてしまっているのだが、音圧を上げるのにかつてWaves社のUltra Maximizer等を導入したところそれが実は余りにも簡単にできてしまうことに驚愕したことがあり、「やっぱり音楽だって金なんだよな」とぼやきながら、このたびは衝動的にエレキギター音源であるAmple Sound社の「Ample Guitar V」というのを買ってしまった。1万8千円は自分には相当高い。これはレスポールという、ギターに無知な自分でさえその名を聞いたことのある超有名なギターの音をサンプリングしたものである。  ついでいに勢いでドラム音源とかエフェクトも幾つか買ってしまったので財布が酷いことになっている。

 ヘヴィメタルとは、という問いに「様式美」と答えたのはデーモン閣下だったろうか。確かに、このジャンルはPOPのようなお決まりのAメロ、Bメロ・・・といった定式に収まらないような、楽曲ごとにオリジナル性のある構成法を取るものが多いような気がする。
 もっとも、私の好みから言えばやはり転調が少ないので、そこはいつものように好き放題やりつつ、ヘッドバンギングが全く不可能な8分音符単位の変拍子(5/8, 7/8, 10/8, 11/8 …)で埋め尽くした。それでも、私が試聴したヘヴィメタルに込められたエモーションを和声と旋律で再現した部分があって、高いG音まで上り詰めて苦しそうな巡音ルカの絶叫と相まって印象的にすることが出来たように思う。

 ヘヴィメタルは何と言っても男性性を押し出したシンボル体系であろう。ディストーションをかけたエレキギターの爆音や両足バタバタで走るドラムス、(今回は使わなかった)デスボイス(グロウル)、たくさん鋲を打った黒いレザースーツを中心としたファッションなど、男性的な嗜好を相当ファットにブーストしている。
 もっともリスナーにはちゃんと女性もいるようで、前に札幌のライブで、ローカルなメタルバンドの音楽に乗って激しく髪の毛バサバサとヘッドバンギングする女子3名を見、カルチャーショックを受けたことがある。この場合の女性の心理というのはよく分からないのだが、そこで示されている世界観としては、映画「マッドマックス」の最初のやつとかマンガ「北斗の拳」などの悪役たちのヴィジュアルと重なり、メタルバンドの人もインタビューでやたら暴力的なことを言ったりしているが、「暴力」はイメージ戦略であってネタとして振りかざしているだけなのかもしれない。それでも、メタルバンドのメンバーの最低一人は肩からむき出しにした上腕が筋肉隆々というイメージがある。軟弱な私なんか一瞬でのされそうだ。  今回の作品は、そんなある意味純朴な男性臭さに、相当ひねくれたクレバーさを加味してみたものだ。動画には何故か男どもにはいつも魅力的すぎて、小児的愛着の対象である「メタリックな機械製品」を多めに押し込みつつ、ノリがずっこけそうな変拍子を、それと分かるようにした。
 こういうエモーションで、普通の4拍子にして余計な(他ジャンルの)要素を取り除いたら、少しは「人気」が出るかなあ、などと思いつつ、ひねた自分に後悔はしていないcrying metallic heartsである。


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