前衛スギルキミ/ファイナルバージョン
textes/notes/音楽
written 2018/9/23
昨日ついに「前衛スギルキミ」の最終版となる動画をYouTubeにて公開した。
ボーカルLalamiさん、ピアノ演奏河合丈則さん、その他のサウンド加工、作詞作曲、動画作成は私である。
楽曲「前衛スギルキミ」が完成したのは昨2017年の5月21日。当初はMIDIによるピアノとボーカロイドによる音源だった。
現代音楽はなかなかリスナーがいなくて、たいていの人には避けられてるし、淋しいよね。だったら、こんなのをアイドルに歌って貰ったらどう? という思いつきで書いた曲である。従って、この曲を若い女性の「アイドル」もしくは女性シンガーに歌って貰わなければ意味がなかった。
ピアノ・パートは作曲家兼ピアニストの河合丈則さんが早速引き受けて下さったものの、歌い手さんを探すのが大変だった。ネットで調べて、手当たり次第にローカルなアイドルさんに打診のメッセージを送ってみたが、何も反応はない。この曲は歌部分だけ抜き出すとふうに調性的な旋律なのだが、とにかく、背後では不協和音が鳴りまくる。それに惑わされずに歌うのは、やはり結構きつかったのだろう。
最終目標を動画作成・YouTubeに公開することに置いていたので、女性シンガーには出来れば歌唱最中の様子を顔出しで出演してもらいたかった。この点もネックになり、せっかく引き受けて下さった方も尻込みしてしまうという状況だった。
先に作曲家紫合ユウさんにお願いして作って貰い、大変音感に優れた歌い手である如月梓さんが歌って下さった「Caritasaバージョン」が同年6月25日に公開された。
この後、わがオリジナル版での歌い手を探し続けたが、ようやく見つかったのは今年の2月になってからである。
私がLalamiさんを初めてお見かけしたのは昨年暮れ頃の、札幌市のあるライブで、そこに登場した彼女の、本当のプロ仕様と呼ぶべき完璧な振付に驚愕したのだった。その身のこなしは完全に他の方とは一線を画したもので、異様なオーラを放っているようだった。歌も非常に上手かった。この方はアイドル系・サブカル系のシンガーなのだが、ローカルなアイドルにはありがちの音程の不安定さが無く、しっかりと訓練を積まれた歌で、安心して聴けた。その後彼女のCDを入手して聴いてみたら、巧みに様々なキャラクターを演じ分けつつ、安定した歌唱力を遺憾なく発揮されていた。(「七曲と七色」)
ダメ元でTwitterのDMで「前衛スギルキミ」プロジェクトを打診してみたところ、何と引き受けて下さったのである。
彼女は日々バリバリ精力的に活動されておりひっきりなしの札幌市内でのライブや、ラジオのパーソナリティなどをもこなしつつ、月に何度も東京や関西方面へライブに出かけており、セルフプロデュースの能力にも優れた、北海道随一と言ってもいい存在なのだが、アーティストらしさというか、私のような奇妙な依頼をも「面白いかも」と思えば積極的に参加されるということだろう。凄い方である。
河合丈則さんにピアノ演奏していただいて、幾らか加工した音源を用いて、今年8月28日に札幌のUNION FIELDでボーカル録音・動画撮影を敢行した。
動画は、私の撮影技術がド素人レベルなため、プロレベルのものは到底できないのだが、時間と力だけは入っており、それなりに面白いものが出来たと思っている。
さすがのLalamiさんも今回の曲は歌いにくいとおっしゃっていた。最終的にはボーカルだけ録音したトラックを入手し、それとピアノ演奏のトラックを合成して様々に加工したわけだから、よく考えたら、このような無調の歌いにくいバックトラックとは別に、ふつうの調性音楽として作成した「ニセ」バックトラックを使って録音する、という手もあったと思う。どうせ録音したものをつぎはぎして合成加工するのだから、その素材を別の手順で用意したら良かったのである。
会ったこともない河合さんとLalamiさんが不思議な共演を果たしているのも面白い。現在のテクノロジーを用いれば、もっともっと複雑で楽しいことができるのかもしれない。たとえば、この曲では「歌いやすさ」を優先してピアノパートもあまり「徹底的」な現代音楽ではない程度に抑制しており、2小節単位の拍節構造、単純な4分の4拍子の持続などを心がけていたわけだが、最終目標がコンサートでないならば、もっと凄いことが出来てしまうかもしれない。
もっとも、生身の出演者を依頼するとなると、カネもかかってくるので、とりあえずは、やはりボーカロイドに頼ることになってしまう。
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