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「du | vous | you」を公開

textes/notes/音楽

written 2012/9/9


 また音楽活動のために出費してしまった。VOCALOID3 Editorとボーカロイドライブラリ「結月ゆかり」を購入。
 ニコニコ動画で検索して人気曲をちょっと聴いてみたとき、なかなかいいなということで「結月ゆかり」を選んだのだが、やや声がハスキーで、得意そうな声域はミクよりも低い。もちろん生身の本格的なシンガーほどエモーショナル&パワフルに歌わせることは無理だろうが、どうやらロック調にもマッチするようなので、私の結月ゆかり導入第1弾はロック調、ただし激しく変化する変拍子と若干不安定な調性をとりいれるという方向に決定した。
 現代音楽的要素は今回、ほぼ完全に放棄している。
 うねうねと変容していく拍子・リズムと調性は、生身による演奏・歌唱を拒否しているものの、ぼんやり聴く分にはポピュラーミュージックの範囲内だと思う。
 多分にロックを意識している。作りながら、ローリング・ストーンズやヴァン・ヘイレンからメタリカ、マルムスティーンなどのCDを久々に引っ張り出して聴いていた。ギターやドラムスなどの打ち込みは適当だけれど、それなりにロックの息吹があると思う。

「ドゥー・ヴー・ユー du | vous | you」
音源: http://www.signes.jp/musique/GeometricPoems/du_vous_you.mp3
歌詞: http://www.signes.jp/musique/GeometricPoems/du_vous_you.txt
掲載ページ: 幾何学詩集

  du | vous | you by nt.signes 

 歌詞は、もともとマルティン・ブーバー『我と汝』に書かれているような二者関係をテーマとしている。「偽物のコミュニケーション 顔もなく声もなく」などと情報化時代のネット・コミュニケーションを批判した前作「共時態」とは正反対の、なまなましいコミュニケーションの現場をイメージでしている。<われーなんじ>という特異な「関係性の場の生成」を描写しているのだが、あえて「普通の恋愛系歌詞」としても読めるようにしておいた。このくらいならふつうのリスナーも「?」とならないだろう。別に媚びるつもりはないが、拗ねたように韜晦ふうの歌詞にかならず執着するのも馬鹿らしいし、歌詞なんかどうでもいいと思っているのだから、何をやってもいいわけだ。

 キャッチーさをも狙いながら、かつてないBPM200の高速テンポで、目まぐるしく変わる変拍子と妙なコード進行(あてのない転調!)のために旋律は曲折し、スムーズな歌謡性やロック・スピリットに対して心のどこかであらがっているかのような、アンビバレンツな心的結晶=心の戦場としての作品、と呼ぶこともできるかもしれない。
 音楽に敏感でない人も、聴いていてどことなく居心地がわるく、BGMには向かないなと思いながらも、ちょっと興味をかきたてられるような、そんな音楽になっていたら本望である。

「だからなんだって言うんだ!? 一体何がやりたいんだ?」
と誰かが吐き捨てるように言う。
 仕方がない。私のなかで、さまざまな「音楽」が、このように交差した。この私的な音楽という「できごと」を、私は出来るだけリアルに捉えようと努力するしかない。

 今回は「ボーカリスト」結月ゆかりの能力を試すために「比較的普通めの調性」でストレートに歌わせてみた。GENもいじってないし、妙なエフェクターも通していない。普通だ。
 いろんな音を出させてみようと思い、かなり広い音域で歌わせてみたが、やはり高音域(E4とか)はよくない。サビと最後の方はどうにも辛い感じがする。やはり、低い音域で歌った方がリアルだ。それにいわゆる「調声」は私は上手ではないので、思ったほどリアリティのある歌唱にならなかった。低能でごめんなさい。
 それにしても、曲調のせいなのか、ここ数日は「曲を完成させなければ」というへんな緊張感を強いられ、夜明け前の4時とか3時に自動的に目が覚めてしまい、一気に作業を進めた。そんなこともあって、雑な作りになっているかもしれないが、それもロックならでは、と勝手に思っている。

 私の作品群の中ではかなりPOP寄りの本作だったが、大丈夫、現代音楽にはまた取り組む。
 結月ゆかりならバラードも行けそうなので、次はゆるやかな歌曲ふうのものにしてみるか・・・。


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