大震災を経て
textes/notes/雑記
written 2011/3/20
3月11日金曜日、日本史をおおきく屈曲させるほどの東北・関東大震災(東北大震災)が起こった。
私はその数日前から奥歯が痛く(歯周病/歯周炎)、当日は午前中歯医者に行き、午後から仕事に行ったのだった。
14時46分頃、大きな地震があった。北海道も、私の職場付近は震度4くらいだった。大きく横方向に、やたら長い時間揺れたので、棚のものが落ちたりとか何か倒れたりはしなかったが、かなり騒然となり、建物のチェックをしなければならなかった。しかも大津波警報。
娘が心配になり、携帯で家に電話したもののなかなかつながらず、数回の大きな余震を経てしばらく経ってからようやく連絡がついた。家族も家も無事だった。
「北海道南西沖地震」を檜山管内で経験した私にとっては、さほど大きな揺れではなかったが、東北地方で「震度7」という驚愕の数字が耳に飛び込んできた。
その日の夜と、次の土日はどのTVチャンネルもぶっとおしでニュース特番。私や妻は東北地方の惨状に驚きながらTV画面を見続けたが、娘は飽きてしまい、「サザエさん」がないことに不平をもらした。
Twitterは地震直後から、揺れへの驚愕ツイートとか、災害情報が入り乱れた。どこそこで被災し、救助を求めているとかいうツイートが公式・非公式RT(リツイート)でしきりに流れてくる。私も混乱しながら、もしや誰かの役に立つかもしれないと思い、いろいろRTした。ニュース系や、後には放射線の専門家などもフォローし、Twitterは私にとって、最も迅速な情報ツールになった。
が、土曜・日曜のあたりから、Twitterは異様な空気に包まれ始めた。
・多くの人びとは「善意」に満ちていて、「今こそみんなで団結して被災者を救い、日本を立て直すんだ」というような一体感が生まれていた。
・その分、地震と関係ない日常的なツイートはしづらい雰囲気が生まれており、「自粛」しない者イコール「不謹慎」という流れができた。
・日本の大災害に寄せられた各国の声がやたらリツイートされ、とりわけ「日本人はこんな災害にあっても行儀がいい」みたいに評した海外の記事をいろんな人がRTし、「日本人でよかった」などという、自己肯定からくる不思議な「感動」が横行した。これは地震直後のことだ。
・数日経ち、自衛隊の活躍が目立ってくると、やはりネットではどこにでもいるウヨクくんたちが「自衛隊の勇士云々」というリツイートを始めた。(もちろん彼らもすばらしく活躍しているが、警察や医者、ふだんみなさんからボロクソに言われている自治体職員(被災地の)も、もちろん、ものすごく頑張っているのだ。何故アイコンに日の丸つけた人びとは自衛隊ばかり絶賛して公務員などを黙殺するのか?)
まさに、Twitterでは異様な「共同体幻想」が肥大化していたのであり、一種の集団心理が人びとを酔わせたのだ。
今回のそれは善意からくるものだが、熱狂的な集団心理であることに違いはない。しかも、知識のない者たちが情報発信者になっているので、どこかで間違った情報・間違ったやり方が出てきたら、総崩れ的にヤバい方向に向かいかねない状況だったと思う。
USTREAMはふだんあんまり見ないのだが、NHKなどがリアルタイムで番組を流してくれるのはたいへんよかった。これこそ新時代に求められるサービスだ。ふだんからこういうふうにインターネットを生かしてくれたらなあ、と思った。
民放TVでは、Twitterで批判されたとおり、被災者への露骨なインタビューとか、事件をドラマ化し、エンタメ化してしまうような、ひどいマスコミの姿勢もあった。その点、やっぱりNHKは冷静だった。退屈な繰り返しが多いけれど。
北海道では数カ所の沿岸や船を除いてほとんど被害もなく、月曜から私は仕事に戻ったが、福島原発のトラブルが気になって仕方がない。そこでいくら放射性物質が漏れても、北海道はたぶん被害を受けないだろうから、私にも家族にも直接は関係ないのだが、いまにもメルトダウンしそうな原発の状況が、まるで世界の崩壊を意味するかのように思われ、私をひどく不安に陥れた。なにかもの凄い惨事に至りそうな気がしたのだ。
たぶん、ニュース漬けで過度の緊張が数日つづいたため、私は弱っていたのだろう。木曜くらいからTVニュースはあまり見ないようにし、中断していた作曲を再開したり、マンガを読むなどしてリラックスを心がけた。
現在は、平常心に戻っていると思う。福島原発も、まだ危機を脱したとは言えないだろうが、屋外から建物に水をぶっかけるという、よく考えたら映画的なものすごいやり方で、炉心の冷却が進み、放射線漏れも数値的におさまりつつあるようだ。
そして、私の歯周炎も治まりつつある。このまま収束してほしいものだ。
だが一方では、地震から9日が経過した今日でも、やっと救助された方がいる! 地震から数日後に、薬不足などのため入院患者が亡くなったというニュースも痛ましい。彼らは救えたはずなのに・・・。現在でも被災地は物資不足に悩んでいるようだが、各国からも応援がたくさん来ているにもかかわらず、まだこんな状況なのだから、一体どれだけ広範囲にわたる甚大な被害だったのだろうと思う・・・。
だが私にできることは何もない。せいぜい義援金をひねりだす程度だ。
今後は日本経済全体やら、東北の被災地の避難者やらが心配なのだが、私にできることは、何もない。
そんなことで、私個人の心理的にも動揺がおおきくて、つくっていた曲は全然はかどっていない。逆になんとなく混迷しつつあるかもしれない。
最近はあれだけ読んでいた本さえ、あまり読む気になれない。
しかし個人的な都合を言わせてもらうなら、今作っている曲を早く完成させ、次々ととりかからなければならない曲がある。
ひとつは震災チャリティ用の楽曲だが、ほかにネットレーベルで私の音楽を出してくれるというので(無料MP3の形でネット公開されるだけだが)、それ用に4曲ばかり作らないといけないのだ。いずれも〆切のない課題なのだが、どうも気持ちだけは焦ってくる。
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