「Waves」が完成
textes/notes/音楽
written 2010/4/18
未完成の「断絶詩集」は置いといて、新しい曲集「PRISM」の1曲目、「Waves」が完成した。
クレオフーガというDTMコンテストサイトの、「リラクゼーション・ミュージック・コンテスト」に急遽応募しようと思い立ち、作ってみた曲。
募集テーマは「ヒーリング」なのだが、結局のところ、一般的な「ヒーリング・ミュージック」とは違う音楽になったと思う。先日既に書いたように、私は、その「一般的なヒーリング・ミュージック」なるものが、決して好きではないのだ。好きではないものを書くことはできなかっった。
コンテストで結果が出なくてもしかたがない。自分の音楽を棄てるくらいなら、棄てられた方がマシだ。
掲載ページ:http://www.signes.jp/musique/index.php?id=689
MP3: http://www.signes.jp/musique/Prism/Waves.mp3
ところで過去に私に「癒し」のようなものを感じさせたものといえば、
(1)何と言っても、まずはラヴェルのピアノ協奏曲ト長調の第2楽章
(2)モーツァルトのいくつかの緩徐楽章
(3)キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」と「心の瞳」
(4)バルトークのピアノ協奏曲3番、あるいはショパン、ラフマニノフ、プロコフィエフのコンチェルトの緩徐楽章
(5)ドビュッシーのいくつかの作品
(6)パット・メセニー・グループのいくつかの曲
(7)ジョン・ケージのしなびた音楽
あたりがまず思い浮かぶ。
イージーリスニングみたいなのには、まったく興味がない。「一般的なヒーリング・ミュージック」もそのひとつだ。
今回、ピアノを主体に、自然音(波の音)、エレクトロな音、リズムのループ等を使用しながら、ややエレクトロ路線のゆったりした音楽を作った。当初アンビエントっぽくするつもりだったが、ピアノ主体のクラシカルな展開となり、アンビエントではなくなった。途中でミニマルっぽくなるが・・・。
後半にオーボエ等の木管が出てくるのは、そこでラヴェルに回帰したくなったためである。
「癒し」ってなんなのかは、わからない。人を癒す以前に、自分が癒されてない。根本的には誰も癒してはくれないから、私はただ、やや穏やかなタイプの「美」を探しただけだ。単純なヒーリング・ミュージックに簡単に「癒される」人たちは、実際には病んでいないのだと思う。少なくとも、自覚的には。
音楽なんかに「癒し」を求めなくっていいのだ。必要なら病院に行けばいい。癒えるかどうかは保証できないが、薬はもらえるだろう。
あるいは、私たちをほんとうに癒してくれるのは、「死」だけかもしれない。
みんなが「癒されるー」とか言っている音楽は、詰まるところ、深層の病を隠蔽してくれるような表象でしかないのではないか。
私たちは、結局「美」の最終的な定義を知らない。
美は、戦慄を呼び、震撼させ、陶酔させ、炸裂し、破壊し、和ませ、絶えず消滅しつつ、生成し、輝く。
「美」の多様な表情は、ひとつのアプローチでカバーしきれるものではない。
方法論にとらわれることさえなければ、私たちは、多彩な「美」を発見することができるだろう。芸術作品やドラマに限らず、日常生活の些細なひとコマの中にも。
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