Synapseを公開
textes/notes/音楽
written 2010/3/21
最近とりかかっていた「軽くて爽やかな、ノスタルジー系POP」が完成したので公開。
「断絶詩集」4曲目、「シナプス Synapse」。
http://www.signes.jp/musique/SeverancePoems/Synapse.mp3
「Endon」を経てさらに「ふつうのPOP」の軽さをめざした。
ニューロンの接合部分、シナプスに関する歌というテーマは、「断絶詩集」を書き始める前から温めてきたものだ。
「つながりたいんだ・・・」という歌詞は、単にニューロンが別のニューロンとシナプス接合を繰り広げていくイメージに、私自身の自己が弱ったとき、周囲の誰かとあるいは、TwitterとかSNSなどを通して、「誰かとつながりたい」というネット依存的欲求に身を焦がす、その切実な感情をダブらせている。
さらに、木村敏氏の著作に啓示された「『あいだ』にこそ、主体が形作られる」というテーゼをもシナプスという「隙間」のイメージに重ねた。ニューロンもまた、次々と接続を変え回路を変容させてゆくことにより、人間の精神の可塑性を決定づける。この意味でやはり「あいだ」が、自己という流動性の鍵を握っている。固定されたものは「死んでいる」。人の性格というものもまた、一般に思われているほど固定的なものではないはずなのだ。
わたしたちは、「関係」の流動性によってこそ、「生きている」のである。
自分があまりに孤独だから、誰かとつながりたい。最近POPな方向に自作音楽を急旋回させているのも、そこに理由がある。が、「誰かとつながりたい」欲望の裏に、私は実はせっかくできつつあった「人との関係を断ち切りたい」という、タナトス的なパッションを深層的に忍ばせているのだが、今回は「前向きの軽いPOP」という前提なので、歌詞も表層的な一面性にとどめ、他者たちに受け入れやすいよう心がけた。
結果、私にはありえないほどさわやかなオプティミズムを漂わせることになった。
この曲はまた、私を楽しませてくれたJ-POPの歌姫たちへのオマージュでもある。
しかし「ふつうのPOP」とはいえ、「リズムシーケンスから曲を作り始める」ことをしなかったせいか、今回のメロディーはあまり「今ふう」でないような気がするが、イメージ的に「いきものがかり」とか倉木麻衣のような、ややアナクロニックな音楽性を当初から意識していたのも事実だ。冒頭のメロディーとかもっと古い感じかもしれない。
先鋭的にリズミカルなメロディーにした方が、より「現在のJ-POP」という意匠をまとえただろう。
それに、やたら「遠回りな転調」で遊んでたりするのは、やはり「私らしさ」なのか(笑)。
あと、西野カナくらいにうまくエモーショナルに、初音ミクを歌わせることができれば、パッケージのクオリティあがるのだろうけれど、自分の技術はこんなもんだ・・・。もっとうまい人はいるのだろうけど、私自身、VOCALOID自体にはあまり興味ないしなあ・・・。
完全POPな楽曲をつくる作業は、いつもの創造性を求める試みとはまったく別物で、なんだか退屈に感じながらも、プラモデル感覚でアレンジ・ミックスをせいぜい楽しんだ。
私は「自分が」おなじことを繰り返すのがキライなので、とりあえず次はまた違う曲調でやるつもり。
さらに「いまふうなポップ」を書く試みは、「断絶詩集」シリーズが終わってから、別の形でとりくむべきだ。
予定では、「断絶詩集」はこのあとにエレクトロニカかロックを持ってきて、さらに、コンピュータ・テクノロジーのサウンドを用いながら、強烈に「現代音楽」的な楽曲を書く。そうして、円環は閉じる。
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