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Endonが完成

textes/思考/音楽

written 2010/2/27


「断絶詩集」の3曲目、「エンドン Endon」を公開した。
 Endonはテレンバッハの術語で、内因性Endogene精神疾患の「内因」を生み出すもととなる、人間の「根源」である(『メランコリー』木村敏訳、みすず書房)。それはメランコリーの発病をもたらすものでもある。

http://www.signes.jp/musique/SeverancePoems/Endon.mp3

 お聞きの通り、これまでの曲とはかなり違う、わかりやすい曲想だ。
 ジャンルとしてはPOPなのだが、モーリス・ラヴェルふうの古風な旋法を使っている。これは坂本龍一氏や久石譲氏あたりもときどき使うものだし、模倣者もそこら中にたくさんおり、日本人にはすでにおなじみの旋法というべきものだろう。ゲーム音楽にもよく出てくる。
 今まで試してきたクラシック的、現代音楽的、かつ実験的な傾向は影をひそめ、ひたすらに親しみやすい調性音楽をめざした。タイトルに難しい専門用語を用いており、歌詞がやはりネガティヴであることを除けば、これは相当に通俗的な作品と言えるだろう。ややノイジーなサウンドづくりが、作者の心情の「照れ隠し」あるいは「毒素」としてかすかに残っているだけだ。

 実験的・挑戦的な、マニアックな作曲者ntは、ここでついに孤独に耐えきれず、他者を求め、世界の「みんな」と自己とのあいだを埋めるべく、この曲を書いた。
 これは譲歩だろうか?
 しかし、一度私は、自己の身体を炎で焼き尽くさなければならなかった。
 ntは、私をいったん棄て、世界との「あいだ」に歩みよった。

 さてこの曲は、期待どおり人々に好まれるだろうか?
 それでもやはり、私は拒否され続けるのだろうか?


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