初音ミクを試す
textes/notes/雑記
written 2009/1/10
注文していたソフトが先週届き、おニューのIntel iMacで早速活用している。あの「クリプトンVocaloid 初音ミク」である。
そういえば十数年前DTMを始めた頃はクラシックではなく、ジャズを含めたポピュラー・ミュージックを試作していた。当時も時折「歌モノ」を書いてみたいと思っていたものの、実現する見込みはなかった。
時代は変わり、話題の「初音ミク」、当初から興味を持って見守っていたが、あいにくWindows専用ソフト。しかし、IntelチップのMacで、仮想化ソフトを用いれば、Mac上で動作できるのである。
そこで「CrossOver Mac」を用意した。
このCrossOverを使えば、WindowsのOSを購入しなくてもIEやOfficeなどを稼働できる。ゲームソフトなどもある程度動くらしいが、すべてではない。今のところ「GyaO」はこれを使っても見ることができない。だがとりあえず、私が使いたかったのは「初音ミク」なので、他のソフトについてはまだ全く試していない。
話題の「初音ミク」だが、予想通り、人間と同じように豊かに歌うことはできない。もちろんデータ作成の力量によっていろいろ可能性は残っているだろうが、声楽というのは最も表情多彩な楽器である。そんな人声のすべての表現力をカバーするには、あと数十年テクノロジーの進歩が必要か・あるいは不可能だと思われる。
だが、「初音ミク」はこのキャラクターに関連するアニメチックな画像を伴って、いまやネットで異常なまでの人気を博している。オタクさんたちは垂涎状態だ。「初音ミク」という「キャラクター」の表徴をまとって同人誌風なイラストやら動画やら、ネットに飛び交っている。
この人気ぶりの中では、もはやソフト音源として・音楽としてどうか、というようなことはあまり重要ではない。ロボットじみた声だが、「それがいい」というところだろう。
かつて「マクロス」というTVアニメでリン・ミンメイとかいう、アニメ内の仮想アイドルが人気を博し、CDが出るなど、オタクな方々を妙に萌えさせていたことを思い出す。
私は二次元キャラに興味は持てないので、その意味ではかつての「マクロス」も現在の「初音ミク」も冷静に眺めている程度だ。
その「初音ミク」(ソフト音源としての)についてだが、なにぶん初心者であり、高度に使いこなすにはほど遠い。
しかし、ロボット的なボーカルであえて抽象的な歌詞を歌わせることにしたので、今回は「こんなもんでいいでしょう」という押さえである。
ちなみに「初音ミク」の専用のシーケンサがCrossOver Mac上で動かせるのであって、私のメインシーケンサであるLogic Expressのプラグインとしては稼働できない。仮想Windowsの方で歌唱データを作成し、waveファイルで書き出して、それをLogicに配置するのである。今回iMacのメモリを4GBにして買ったおかげで、これらすべてを同時に起動しても極めて快適に動作している。
問題は楽曲そのものである。
今回は現代音楽的なノリでポップソングをやってみよう、という初の試みなのだが、やはりいろいろと難しい。
今まで器楽曲として書いて来た旋律を、ロボットとはいえ人声に歌わせてみると、非常に変なのである。ただの音痴に聴こえてしまう。
これは興味深い、重要な問題だ。
クラシック界の現代音楽においても(私は声楽にはあまり詳しくないが)、ヴォルフガング・リームやヴァレンティン・シルヴェストロフ Valentin Silvestrov(1937- ウクライナの、私が最近気に入っている作曲家である)にしても、歌曲では意外とシンプルに・オーソドックスな旋律を書いている。
ジャズでも(私はジャズボーカルには全く詳しくないが)、一般的にボーカルは楽器ほど激しく動き回らず、ぜんたいに聴きやすい・オーソドックスなメロディを歌っていることが多いようだ。
なぜか?
人間の「歌」はそれ自体が自然な、ムリのない旋律を要求するのだろうか?
単純に、ウェーベルンくらいに無調な旋律?にしてしまうと、声楽家は歌いにくくてかなわないということもあるだろう。
ということで、私もなんとなく旋律が聞き取れるよう、いつもよりずいぶん譲歩して調性を活用せざるを得なかった。
この作曲は今までとは全然違う試みで、結果としていい作品がすぐにできるとは思えないが、私の「新しい実験」の第一歩とはなるだろう。
現代音楽+POP・・・・。ほんとうは「+民族/中世・古代音楽」を加えたい所だが、今はまだそこまで行けないようだ。
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