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ルネサンスから遠い場所で

textes/notes/雑記

written 2007/12/16


ルネサンス期声楽曲に触発された私のピアノ曲集「残酷な小曲集」、4作目の「ミゼレーレ Miserere」ができたので、今回はすぐにアップしてみた。
「プレインソング Plainsong」に引き続いて中世-ルネサンス風味のある曲。「パストラール Pastorale」「インヴェンション Invention」はあまりこの感じがなく、今まで私がやってきたことの単純な延長という気もする。器楽的すぎるからかもしれない。
特に「インヴェンション」はどうも今聴き返してみると不出来だ。和声外音を積極的に使っているのだが、なんとなくプロコフィエフ的な諧謔に向かいそうでいてその痛快さまで届かず、バッハ的に堅実でもなければ、中途半端にロマン主義的なフレーズは出てくるし、現代音楽として優れているわけでもない。なんだか微妙だ。この曲はあとで抹消するか、「インヴェンション第2集」に送り込むことになるかもしれない。
今回の「ミゼレーレ」は基本的におとなしく、最初の数小節は完全な2声カノンだし、複調的な不協和音や変化音は、感情の高まりとともに現れるだけで、そうした響きは有名な「Miserere」の歌詞に露骨な自罰的・絶望的心情が反映されていると解釈することも可能だろう。

「ルネサンス音楽との出会い」からただちに当時の音楽をすっかり模倣するのではなく、じぶんの既存のパレットの色と混ぜ合わせていろいろやっているわけだが、今のところさほど成果はなく、ストレートなルネサンス音楽や近代・現代音楽を聴いたほうがずっとマシだという感が否めない。
ルネサンス精神とは少年的な感受性と積極性だと思っているのだが、私が今いる場所はそこからはるか遠い所なのだろう。
もうちょっと実験を続ける気ではいるけれど、時間をかけてゆっくりやりたいと思う。

ところでホイジンガ『中世の秋』を読んでいたら、「芸術様式としての恋愛」について論じたくなった。どうせ書くなら恋愛論として掘り下げたいので、ロラン・バルト『恋愛のディスクール』なども読み返し、もう少し資料を漁り思考を深めなければならない。


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