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ラヴェルに足りないもの

textes/批評/音楽

written 2003/5/11


以前お気に入りだったこの作曲家に対して、今の私はかなり批判的だ。
もちろん卓抜な作曲ではあるが、何かが足りない気がしている。

たとえば「夜のガスパール〜オンディーヌ」。しばしばピアノ名曲集にも入るほどの人気曲(もっと演奏が簡単だったらさらに人気が出ただろう)だが、わかりやすいイメージ、わかりやすい構造、キャッチ―なメロディーのほかに、さらにすべてを超えて迫ってくるものをもっているだろうか。
シマノフスキの「メトープ〜カリュプソー」あたりと比べてみるとどうだろう。
ディテールの技巧の点でも、全体の完成度の点でも、ロマンティシズムの点でも、ラヴェルに軍配があがるのだろうが、シマノフスキのこの初期の作品には、レベル的にラヴェルを上回るものがないだろうか。
ラヴェルには、たしかになにかが足りないと思うのだ。
しかし、当時はフランスでもさほど重視されてはいなかったこの作曲家の、今日における「人気」はまだまだ衰えないだろう。


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