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武満徹

textes/批評/音楽

written 2003/9/6


Takemitsu Toru (1930-1996)

武満の音楽はうねうねとしたざわめきをともなう静寂のなかに、自然そのもののように屹立する。
実験性やら方法論やらは問題ではない。
美を射抜こうとするその姿勢、まっすぐな視線がラジカルなのだ。
なるほどそれは「日本的」なのかもしれない。しかしもちろん彼の方法は決してトラディッショナルに日本的であるわけではなく、余分な構えの無い感性の発露に長所がある。
そして最も衝撃的なのは「間」の使い方だ。
1950-1960年代の曲はかなり前衛的なとがったひびきを持つが、後年(1975年くらいから)はややまろやかな響きになり、より調性的に、印象主義からの影響が明らかになる。

弦楽のためのレクイエム (1957)

ストラヴィンスキーに感銘を与えたことで、武満徹を有名にした作品。たしかにこの音楽は印象深い。

ノヴェンバー・ステップス (1967)

琵琶と尺八をオーケストラに登場させ、海外でひろく取り上げられた作品。その類の「日本主義」ふうの曲を、多くの日本人作曲家が試みてきたが、ここまで純度の高いものは少ない。

秋庭歌一具 (1973-79)

「しゅうていがいちぐ」と読む。雅楽のスタイルによる傑作。「間を生かす」という言葉をそのまま体現したかのような、隙間だらけの楽節は、瞑想的な深い美しさを帯びてゆっくりと空気の中に溶け混じる。はじめに第4曲「秋庭歌」が1974年に書かれ、その他の曲は1979年に追加された。
私は、この曲の響きにいつも、呆然としてしまう。

雨の樹 素描 II (1992)

武満徹のピアノ音楽は響きの点で非常な純粋さを持ち、美しい。これはもちろん、大江健三郎の小説に基づいた音楽だ。
もともとは別の編成の音楽らしい。

スペクトラル・カンティクル (1995)

最後のオケ作品。ヴァイオリンとギターの独奏を伴う。夢みるような、豊かな響きを持つ音楽だ。


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